2012年3月26日 (月)

気になる論文~抗酸化剤はアルツハイマー病を悪化させる?

ご存知かと思いますが、アルツハイマー病は高齢者に起こる認知症の代表疾患です。そのメカニズムに関しては、脳のアミロイド蓄積やタウタンパクのリン酸化などが関与していると言われておりますが、随分前から酸化ストレスが病態に深く関わると考えられてきました。実際、動物実験レベルでは過剰な酸化ストレスがアルツハイマー病モデルにおける症状の悪化を促し、逆に抗酸化剤が症状を軽減することが指摘されてきました。しかし、最近この考えを否定する論文が発表されました。(詳細下記リンク)

http://archneur.ama-assn.org/cgi/content/abstract/archneurol.2012.85v1

上記論文によると、二重盲検で患者をvitamin E + vitamin C + αリポ酸を投与した群、コエンザイムQ投与群、プラセボ群に振り分け、MMSE(認知機能検査)、髄液中の化学マーカー(Aβ42、タウ、リン酸化タウ)の変化を検討しております(投与期間は16週間)。その結果、髄液由来の化学マーカーは3群間で差を認めず、ビタミン投与群においては認知機能の悪化を認めたそうです。

うーん、抗酸化剤って認知症状を悪くするんですかね?疫学や動物実験で「抗酸化剤は認知症に良い」と何となく思い込んでいましたが、もしこの研究結果が正しいなら、今までの研究成果との矛盾はどうやって説明するのでしょうか。今後も注目したい分野ですね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年3月 7日 (水)

自殺者の50%が精神科通院中だったことは衝撃的な事実か?

皆さんは「心理的剖検」(psychological autopsy)という言葉を聞いたことがあるだろうか?これは主に自殺した方の遺族を対象とした聞き取り調査で、自殺が起こった原因や動機を解明することを指します。名前は格好がいいのですが、中身は結構問題があって、「聞き取り調査に協力した家族のみの情報」という大きなバイアスがかかり、またその聞き取った内容(記憶)も随分修飾されているため、「剖検」というほど正確なことは分からないシロモノです(それでも何もやらないよりはマシなのかも知れませんが・・・)。

 最近この心理的剖検によって自殺者の心理状態そして自殺直前の状況を考察する試みがあり、その結果が国立精神神経医療研究センター等から報告されております。その報告の中で「自殺者の50%が精神科通院中だった」というデータがあったようです。某精神科学会誌において、ある精神科医はこの事実を「衝撃的」と形容し、「自殺者の多くが精神科治療を受けていない」というのは神話に過ぎないのでは?と提言しています。この文章に続いて、自殺者の多くが処方された精神科薬の過量摂取しており(実際の割合は不記載)、精神科がむしろ「自殺を幇助している」と自虐的な持論を展開しております。

 この精神科医のエッセイの文脈から察するに、これは裏を返せば「精神科治療は自殺対策に何の役にも立っていない」ということを暗に示したかったようです。しかし、これはデータの意味を完全に読み違えています。まず分かりやすいように例を挙げましょう。「(例文)日本において心筋梗塞で亡くなる方が7万人を超えるそうです。そのうち90%以上の方が内科に投薬治療を受けておりました。以上から、日本において内科医による投薬治療は心筋梗塞による死に対して効果がないと結論づけられます。」・・・「90%以上」というのは創作で、根拠となるデータを知りませんが、おそらく日本において心筋梗塞で亡くなる方のほとんどが循環器内科などで何らかの投薬治療を受けているでしょう。でも上記の結論に同意する人は誰もいないと思います。なぜならRCTに基づく多くの研究で「投薬治療(降圧剤、抗血栓薬など)=循環器内科通院」が予後を改善させることが分かっているからです。「精神科的介入が自殺防止に効果があるか否か」というのは、ランダムに「自殺志願者」を「介入あり」「介入なし」の2群に分けて経過観察をするという実験をしないと分からないはずなので、実際に確かめることは困難です(倫理的に無理でしょ?)。「自殺者の50%が精神科通院中だった」という事実は、私にとっては「へ〜、精神科の敷居が低くなったんだな〜」ぐらいにしか思えないのですが、いかがでしょうか?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年2月 4日 (土)

副作用自発報告

 少なくとも日本においては、医療関係者がある薬剤による副作用の可能性を疑った場合、製薬会社などを通して副作用報告を行うことができます(副作用自発報告制度)。因果関係がはっきりしなくても、一応薬の添付書に注意書きとして記載されることがありますが、これは「報告義務」ではなく、医療従事者の善意に基づきます。

 最近、ある新薬(抗がん剤)を投与した後に、「珍しい精神病状態」になった症例を経験したので、そのことをその製薬会社に話をしたら、製薬会社から「是非、副作用報告させてください」との申し出がありましたcoldsweats02  自社製品の問題を晒すことになるので、普通なら(?)嫌がるはずなのですが、正直に報告することがこの製薬会社の方針なのでしょうか。製薬会社も色々あって、副作用を隠そうとする会社もあるそうですが、このように自らすすんで報告しようとする姿勢は大したものですね。

というわけで、この副作用報告に関する報告書を作成したのですが、これが少々面倒くさい・・・coldsweats01 もう少し簡易になると、医師からも提出しやすいのでしょうが、過剰な報告を抑制するためにも必要なことなのでしょうか・・・?ちなみに、報告書の謝礼は9000円弱でしたhappy01 (お金が貰えるなんて、知りませんでした)。

 面白い症例だったので、この症例もケースレポートとして、何らかの雑誌に発表しようかと思ったのですが、症状があるときとないときでの薬剤血中濃度に差がなく、結局因果関係はよく分かりませんでした・・・shock (血中濃度の測定は、かなり特殊なので某検査センターに依頼したのですが・・・)。うーん、1例ではちょっと厳しいかな?もう一例経験したら投稿しようかと思っております。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年1月28日 (土)

精神科治療におけるマンガの有用性

 最近、書店あるいはAmazonなどを見ると精神科に関係するマンガを沢山見かけます。以前から気にしていたのですが、一体どんなことが書いてあるのか確かめてみたく、大人買いをしてみました(といっても、どれも古本ですがcoldsweats01)。最近はやっているのは、いわゆる「体験本」が多く、本人あるいは家族が精神疾患にかかり、その奮闘振りをユーモラスに書いたものです。中でも「よく書けているな~」と感心したものを挙げますと・・・

1.「ツレがうつになりまして」 細川 貂々著

2.「マンガで分かる! 統合失調症」 中村 ユキ 著

この2冊は秀逸でしたhappy01 当事者、あるいは家族の方に是非読んでもらって欲しいですね。とくに中村ユキ氏はこれ以外に「わが家の母はビョーキです」という、同じく統合失調症に関するマンガを描かれていますが、これは精神科医が読んでも大変勉強になります。なぜかと言えば、統合失調症の患者さんは自らの生活に関して語ることは少なく、その様子がなかなかイメージできません。しかし、このマンガは身近にいる家族からの視点で、その様子がつぶさに書かれており、「生活臨床」という分野においては貴重な作品だと思います。

 マンガのいい所は、苦労話も「おもしろおかしく」デフォルメしており、それが辛さを和らげる作用もありそうです。実際に患者さんに(そして家族に)、上の作品をすすめてみて、「病気のことが良くわかった」とか「同じ気持ちです」とか、かなり感触としては良いようです。このようなマンガがもっと世に出てくるといいですねhappy01

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年1月20日 (金)

論文受理(和文)

 昨年から蹴られに蹴られた論文が先日ようやく受理されましたgawk 症例報告だったのですが、精神科領域ではかなり高いIFを有する某ジャーナルで、同様の報告があったので(しかも私の論文の方が、クリアな経過!)、きっと海外のジャーナルに受理されると信じておりました。しかし4つの英文誌に蹴られ、結局和文の雑誌に出すことになりましたcrying 内容は、賛否両論ある某有名薬剤の副作用についての報告です(たぶん、多くの人が飲んだことあるかも?)。控えめに見ても、かなりの人の関心を集める症例なのですが、英語雑誌からのリバイスがひどかったです・・・pout 「たまたまじゃない?」とか「もういちど薬剤を投与して、症状が出るか検討してみてね。でも倫理的に無理だろうけど(笑)」など、信じられないコメントが多かったですgawk そもそも症例報告って、因果関係が疑われたら、それなりに報告する意義は十分あるはず・・・。しかも賛否両論ある領域だけに、インパクトは期待できるはずなのですがshock

 ちなみにこの薬剤を作っている会社、実は世界で5本の指にはいる有名企業・・・。疑いたくはないのですが、ロビー活動みたいなものがあるのでしょうか。特殊な分野なのでレビュアーも結局は同じような人がなるだろうし・・・。論文作成する際に調べたのですが、「薬剤と副作用の因果関係がない」とする論文を書いている学者のほとんどが、その製薬会社から資金をもらっているようです。そういった御用学者のもとにたまたまレビューがまわらなかったら、アクセプトもあったのかも知れません・・・。

 しかし、最近ニュースで知ったのですが、同薬剤の臨床データをこの製薬会社が公開しないため、海外のマスコミから非難されているようですcoldsweats02 うーん、やっぱりこの薬剤、黒じゃないかな~gawk

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年11月 2日 (水)

SSRIは本当に自殺率をあげるのか?

1年以上前にSSRIと自殺の関係についてのブログ(SSRIバッシング-精神科医としての意見-)を書いたところ、「SSRIは自殺率を高める。あんたは勉強不足で無知だ。お前のような医者が日本の若者を殺すのだ(一部略)。」と過激なコメントを最近になって頂きました。一応、文献に基づきこのブログを書いているし、私の患者でSSRIを服用して自殺した方もいないので、随分見当違いなコメントだと思いますが、良い機会なので最近の研究を踏まえて再びSSRIと自殺率について書こうかと思います。

まずは今年publishされたSSRIの処方数と自殺者数の研究です。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21760833

Giaiana G: Clin Pract Epidemiol Ment Health.2011;7:120-2. Epub 2011 Jun 16.

この論文によると1999-2008年にかけてイタリア北部で行われた調査では、SSRI処方数が15倍近くになったにも関わらず、自殺率(suicide rate)は減少しているという結果がでました。これは以前私が引用した論文(Nakagawa A, J Clin Psychiatry 2007;68:908-916http://article.psychiatrist.com/dao_1-login.asp?ID=10003112&RSID=58267913751282)と同様の結果で、地域全体としてはSSRI処方数の増加は自殺率と負の相関、つまりSSRIが増えれば自殺率は減る、といった関係になっております。では逆にSSRI処方数が減少した場合はどうなるでしょう?これに関しては2007年にpublishされたWheelerらの論文があり、このイギリスにおける調査によるとSSRI処方数が2004年から激減して2005年には1999年のレベルに戻ったそうですが、自殺率は変化がなかったそうです(Wheeler, BMJ: http://www.bmj.com/content/336/7643/542.abstract)。

日本についてはどうでしょうか?日本の自殺率の推移を見ると、1997年から1998にかけて急激に自殺率が上昇しました(23千人から3万1千人)。しかし、その後の自殺者数は3万人から34千人の間で推移しており、依然として高い水準ですが、自殺率が年々増加している事実はありません(http://www.t-pec.co.jp/mental/2002-08-4.htm)。ちなみに日本における最初のSSRI販売はフルボキサミンであり、1999年の5月下旬に発売されております。その後SSRIの日本における処方数はご存知の通り、右肩上がりで抗うつ剤全体の売り上げを1999年から2004年までの間で3倍以上押し上げたそうです。おそらく2010年度までの段階でもっと処方数は増加していると思いますが、自殺率は横ばいなのです。「SSRIの登場と自殺率の急激な上昇が同じ時期なので、SSRIが原因で自殺率が上がっている。」と的外れなことを言う人もいますが、SSRIが発売される前に自殺率が急増しております。SSRIが発売されていない時期に、どうしてSSRIが自殺率を上げることができるのでしょうか

しかし、プラセボコントロール研究では確かにSSRIが自殺率を上昇させるという文献はあります。この矛盾に対するヒントとなる文献があるので、それを紹介します。これは年齢別にSSRIの使用と自殺率を検討した論文です(Barbui, CMAJ, 2009: http://www.cmaj.ca/content/180/3/291.full)。この論文は20万人の患者を含む8つの研究を系統的にレビュー(メタアナリシス)したものです。これによるとSSRI投与後、思春期の患者(19歳未満)は自殺企図が1.92になり、成人(19歳から65)0.52、高齢者(65歳以上)は0.46になるそうです。これは何を意味するのでしょうか。うつ病は(特に日本においては)中年~老年期に多い疾患です。つまり、「一番うつ病患者の多い年齢層においてSSRIは自殺率を下げ、その結果患者全体の自殺率も下げている」ということが言えるのではないでしょうか。確かにSSRIの投与は未成年においては慎重にすべきだと私も思います(多くの研究報告、レビュー、メタアナリシスの殆どが同じような結果を得ており、これを覆すような文献を今の所私は知りません)。しかし、全年齢層を含むとやはり「全体としてはSSRIはうつ病患者の自殺率を下げる」というのが事実なのでしょう。では、なぜSSRIは未成年者の自殺率を上げてしまうのでしょうか?これには諸説ありますが、一番私が妥当だと思っているのは、「若年者のSSRI投与群には数多くのうつ病以外の精神疾患が混ざっている」ということだと思います。特に抗うつ剤の処方で悪化する可能性の高い双極性障害は、だいたい25歳前後で最初の躁病エピソードが出現するため、その多くが初診では「うつ病」と診断されるそうです。またSSRI投与を慎重にすべきである境界性人格障害も初診において「うつ病」と診断されるケースが多いと言われております。つまりSSRIが未成年者で自殺率を上げるのは、「初期診断の精度の問題」と言えます。

色々書きましたが、まとめると…

1.SSRIは全体としては(全ての年齢層をまとめると)うつ病における自殺率を下げる2.SSRIは中年、高齢者のうつ病患者の自殺率は下げるが、未成年の自殺率を上げる3.SSRIが未成年の自殺率を上げるのはうつ病以外の疾患が混ざっており、初期診断の精度に問題がある可能性がある、以上3つのことが言えるのではないでしょうか。

このように書くと、私が普段の診療でジャンジャンSSRIを出している医者と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これは違います。初診で「典型的なうつ病」ではなければ、少量のマイナーと、睡眠薬で様子を見ます。いきなり抗うつ剤は出しません。私は、どちらかというと「うつ病の過剰診断」に対して反対する立場なのです(これについては「非定型うつ病」が関係するので、いつか書こうかと思います)。

以上、SSRI、自殺について最近の論文を踏まえて書きましたが、「今後の研究によって私の考えは変わるかもしれない」、と最後に付け加えたいと思います。「うつ病における最悪のアウトカムが自殺」である以上、「うつ病における抗うつ剤の副作用としての自殺」というのは、証明が困難な命題であり、時間を要する問題だからです。また機会があれば、この問題について触れたいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年11月 1日 (火)

日本精神神経学会感想

前回のブログで書いたように指導医更新のために仕方なく東京に行ってきたのですが、ついでに日本精神神経学会にも参加しました。本当は2日間参加したかったのですが、どうしても調整がつかず、初日のみの参加となりました。面白かった内容を箇条書きすると

1. 多価不飽和脂肪酸と統合失調症に関する研究:動物実験でアラキドン酸とDHAを含有しない餌を妊娠期のラットに与えるとその子供はactivity が下がるといった内容。統合失調症モデルといよりはARMS (at risk mental state)モデルと説明していました。

2. 統合失調症患者死後脳における多価不飽和脂肪酸についての研究。富山大学でやっている研究だそうです。ネガティブデータが多かった。

3. 魚油によるPTSDの予防。以前、新聞で見かけたテーマ。ちなみにDHAってとりすぎると出血傾向になるそうですね。グリーンランドに住む人達は脳出血が多いそうです(まめ知識)。

4. 水道水のリチウムが自殺予防に効果。大分大学の研究。疫学&フィールドワークに基づく、素晴らしい研究。泥臭いけど、こういう研究は大好きです。これが本当なら、ストレスの多い会社の水サーバーにリチウム混ぜたら良いんじゃないでしょうか?

5. カルボニルストレスと統合失調症:統合失調症患者においてカルボニルストレスが上昇しており、GLO1(glyoxalase1)活性の低下が原因という内容。将来的にはビタミンB6(カルボニルスカベンジャー)で統合失調症が治るかもしれないという話しもしていました。日常診療や病棟での何気ない会話から、ある患者家系に精神疾患が集積していることに気付き、カルボニルストレスと統合失調症の関係を明らかにした研究。まさに臨床研究の王道ですね。さらに凄いのは、発表者である先生が、大学院には行かず、診療の傍らでこのような素晴らしい研究成果を上げていることです。臨床と研究のバランスをうまくとった、私が一番憧れるスタイルですね。

6. 研究デザインと研究環境の整備について:名古屋大学の尾崎先生のトーク。尾崎先生は以前は動物実験をしており、「動物じゃあかん!人間でせんと分からん!」と考え、留学を機会にテーマをシフトさせたとのこと。激しく同意です。私もテーマ変えたい(泣)。

以上、印象に残ったテーマの感想を述べましたが、これ以外にも面白いテーマはありました。来年は北海道で学会があるそうなのですが、それまでに専門医のポイントが溜まりそうなので、多分行かないでしょうね。旅費もバカにならないし。あぁ、でもカニやラーメンを堪能したい気も(観光目的なのがバレバレですなcoldsweats01)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年10月30日 (日)

指導医講習&学会参加

本当は今年の日本精神神経学会は参加するつもりはありませんでしたが、「指導医」の講習を受けるためにしょうがなく学会に行きましたgawk 専門医になる前に暫定的に「指導医」の資格(?)を取っていたのですが、申請から5年以内に受けねばならない講習を全く受けていなかったため(留学のせいもありますが)、学会のほうから「講習会受けろや、コラ!annoy」と連絡(恫喝)を受けたので、ついでに学会も参加した次第です。講習会は全部で4時間で、しかも夕方から始まりました・・・shock 正直、眠い・・・。でも認知行動療法で有名な大野裕先生の講演をはじめて聴けたので、有意義だったと思います。勝手な思い込みですが、慶応系の先生達って、プレゼンが上手いですね・・・coldsweats01 慣れているせいもあるでしょうが、若い頃にプレゼンのトレーニングでも受けているのでしょうか?

それはさておき、指導医講習の内容ですが、新規に精神科専門医を取る人は大変ですね・・・bearing レポート提出数が最低10、経験症例数が最低45・・・。全部満たすには、精神科単科で取るのは難しいように思えます。結局、この専門医システムってのは、「いかに大病院での研修に付加価値をつけるか」ということをコンセプトに作られているようにも思えますね。まぁ、専門医として知っておくべき知識経験は確かに得られるのでしょうが・・・。

次回は、学会の内容について書きます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年10月17日 (月)

祝、久々論文アクセプト!!

最近、忙しすぎてブログの更新が滞っておりましたbearing その理由の一つが論文で、投稿&リバイスやらでバタバタしておりました。アクセプトされた雑誌は臨床系で、IF=4弱の中堅どころの雑誌です。この前に投稿した別の論文は蹴られに蹴られ、いまだ彷徨っている最中なのですが、後に投稿したこの論文がアクセプトされ、嬉しい限りですconfident しかも、今回は初めてfirst authorでありながらcorresponding authorなので、喜びもひとしおであります。

ところで今回のアクセプトで筆頭著者としてようやく5報目・・・。前回のアクセプトが昨年の1月頃だったので、あれから随分間が空きました(ペース遅いな・・・gawk)。 今年度中にもう一方ぐらい投稿したいのですが、臨床やりながらの投稿は正直シンドイ・・・shock 今月一杯はしばらくこんな感じが続くな~(涙)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年8月21日 (日)

気になる論文:高齢者のうつ病には三環系抗うつ薬がfirst choice?

トリプタノール(一般名アミトリプチン)という抗うつ剤がある。三環系抗うつ薬に属し、強力な抗うつ作用が有る一方、疼痛やオネショにも効果がある凄い薬である。しかし、副作用が強く過量服薬すると死ねる恐ろしい薬でもあります(致死量1.3g=25mg錠x52錠)。ふらつきや心機能への影響もあり高齢者には使いにくい印象がある薬なのですが、この偏見を打ち破るような論文がでました。
Coupland et al., BMJ, 2011 (リンク: http://www.bmj.com/content/343/bmj.d4551.long)
この論文は65歳以上の高齢者に対して三環系抗うつ薬、SSRI、その他の抗うつ薬を投与した副作用のデータをQResearch primary care というデータベースから集めた結果です。この論文によると抗うつ剤非投与群を「1」とした場合、
死亡率は三環系で1.16、SSRIで1.54、その他で1.66、自殺企図は三環系で1.70、SSRIで2.16、その他で5.16、心筋梗塞は三環系で1.09、SSRIで1.15、その他で1.04、転倒は三環系で1.30、SSRIで1.66、その他で1.39、骨折は三環系で1.26、SSRIで1.58、その他で1.64、てんかん発作は三環系で1.02、SSRIで1.83、その他で2.24、低ナトリウム血症は三環系で1.05、SSRIで1.52、その他で1.28、その他の副作用は三環系で1.06、SSRIで1.16、その他0.95・・・
この中でも三環系抗うつ薬であるアミトリプチンやドスレピンの副作用がとても少ない結果となっております。

この論文を読んだ印象としては「ホンマかいな・・・?」。三環系の薬剤は研修医の頃によく使っていましたし、今でも激越型など焦燥の強いタイプのうつ病には使いますが、ほぼ100%副作用でます。「うーん、どういうことだろう」とよく論文を読むと、著者もこの結果が交絡因子やchanneling bias(この場合、処方が疾患の重症度や特徴、あるいは対象患者にあわせて薬剤選択が行われた可能性があるということ)があると認めております。まぁヨボヨボの年寄りよりは足腰のしっかりした年寄りに三環系を投与しようと思う心理は当然ありますよね。それともう一点重要なのは、defined daily dose(DDS)つまり一日あたりの投与量が、三環系では低量投与の割合が70%、SSRIでは中等量投与の割合が72%という内訳でした。すなわち三環系では投与量が相当控え目にされていることが分かります。これは「副作用が出ないように慎重に低容量で三環系を投与している一方、SSRIは正規の使用量で処方されている」ということを意味しております。これなら三環系で副作用が出にくくなるのは当然ですよね?更に根本的な問題として、この論文の欠点として「抗うつ剤と投与した結果、うつ症状が改善したか?」ということが書かれておりません(本当に効いているの?)。それにそもそもこれはランダム化比較試験ではないので、信頼性としては正直高くはないでしょう。ただ、「少量の三環系抗うつ薬」というのは実は私も処方しています。SSRIで反応性の乏しいケースに少量追加するだけで、結構改善するケースがあります。「少量の三環系とSSRIのランダム化比較試験」ってやる価値のある研究かもしれませんね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)