SSRIバッシング -精神科医としての意見-
SSRIという薬をご存知でしょうか?選択的セロトニン再取り込み阻害剤(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)の略語で、現在世界中で使用されているうつ病に対する薬です。従来使われていた三環系抗うつ薬(TCA)に比べて副作用が少なく、幅広い年齢層に使用されてきました。現在わが国においてもうつ病治療の第一選択薬となっておりますが、このSSRIに関して最近「危険だ」とマスコミが騒いでおります(詳細は下記リンク)。
http://www.j-cast.com/2010/05/04065729.html?p=2
このSSRI批判、じつは欧米では随分前からありました。デビット・ヒーリーらが中心となってSSRIバッシングを展開しておりますが、彼らの主張によるとSSRIは「自殺のリスクを高める」とのことです。そしてSSRI処方そのものに対して警鐘を鳴らしており、実際彼らの運動のおかげでFDAも2003年に勧告を出しました。最近になってこのSSRIの自殺リスクについて日本でも報道されるようになり、患者さんたちが、「本当にこれを飲んで大丈夫だろうか?」と不安になっております・・・。
大まかな流れはだいたいこんな感じですが、正直言ってこの手の報道に困惑しております。何故かと言えば精神科医のほとんどは「抗うつ剤を投与するとごく一部の患者さんで落ち着かなくなったりすることがある」ということを知っているからです。これはSSRIに限らず他の抗うつ剤でも同様のことが起こります。SSRIとその他の抗うつ剤の自殺率比較をした研究は色々でておりますが、下記の論文(メタアナリシスによる解析)はSSRIおよびTCA服用後の自殺率はほとんど違いがないことを示しております。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15718539
私も精神科医として200名ほどのうつ病患者さんを診てきましたが、抗うつ剤処方中に自殺をはかった患者さんは1名ほど(幸いにも未遂)、攻撃性が上がった患者さんも1名でしたが、両患者さんともTCAであるアモキサピンを処方した患者さんでした(自殺未遂だった患者さんはアモキサピンの量はずっと変えていません。職場のトラブルをきっかけに事に及んだのでアモキサピンと自殺企図の関係はあまりないと考えております。攻撃性が上がった方は、この他にも多弁興奮といった症状があったので躁転したと考えております)。私の場合、SSRIを処方した患者さんの方が圧倒的に多いのですが、SSRIによって自殺(既遂、未遂)、攻撃性の増大に至った患者さんは幸いにもおりません。
それからFDAの勧告後、SSRIが全体として自殺リスクを減らす論文もたくさんでてきております(下記リンク参照)。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17606656
http://article.psychiatrist.com/dao_1-login.asp?ID=10003112&RSID=58267913751282
結局のところ、「SSRIは他の抗うつ剤と同程度に、自殺、攻撃性などの副作用を起こす可能性があるが、全体としての副作用としてはTCAに比して軽い(TCAは多量服薬で死にます。またTCAは循環器系への影響、自律神経障害、認知症を引き起こすことがあります)。薬剤一般に共通であるがリスクベネフィットを考慮して投与すべきである」という考えにいたると思います。
精神科医の多くは、「うつ病は治りかけの時が一番気をつけないといけない」ということを先輩医師から教えてもらっております。それはうつ症状がひどい時は患者さんは「自殺することも出来ないぐらい疲弊している」からです。しかし、治療が奏功し(治療が上手く行くこと)、徐々に体と頭が働くようになると・・・(現実問題に直面) --> (それに対して絶望) --> (自殺を図る) と言った経過を取りやすくなるのです。つまり「うつ病治療の奏功は常に自殺の危険性を高める」といった一見二律背反のような問題をはらんでいるのです。
また攻撃性に関してですが、ちょっと考えてみてください。「うつ病の薬」ということは「人を元気にする薬」ということです。素人でも「使いすぎれば元気が出すぎて困るんじゃないか?」と思いませんか?少し前にも書きましたが、抗うつ薬の副作用として「躁転」つまり「元気が良すぎて困る状態」が含まれますが、個人的には抗うつ薬の攻撃性とはこの「躁転」に関与すると思っております。「躁病」にも色々あって、古典的なタイプでは「万能感にあふれ、多幸的」になるのですが、「不機嫌で、焦燥感を伴うタイプ」もあります。私はSSRIを含めた抗うつ薬の攻撃性はこの「不機嫌型躁転」の結果ではないかと推測しております。
色々とまとまりなく書きましたが、「なぜ今頃SSRIバッシングなのか?」「なぜSSRIだけがバッシングを受けるのか?」と今の風潮に疑問を抱いております。タミフルバッシングが終わったから今度はSSRIバッシングで国民の不安を煽ってみようと思っているのでしょうか?アメリカではFDA勧告後、若者の自殺率が一時的に急増したそうです(リンク参照:http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5635a2.htm?s_cid=mm5635a2_x )。この自殺の増加がSSRI処方控えの結果と分析してる研究者もいるそうです。もし日本でも同様のことが起こった場合、いまSSRIの危険性を煽っている連中は、どう責任を取るつもりなんでしょうか?「うつ病治療に関する正確な知識」が広まることを願って止みません。
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コメント
どなたか分かりませんが、コメントありがとうございます。その書き方ですと、実際精神科の薬で人生がおかしくなった方なのでしょうか。精神科利権と書いておられますが、別に製薬会社から利益供与があったわけでもなく、決められた用量用法を守って処方しており、決して「気軽に」処方してはおりません。SSRIに対する考えに関しては、最近のブログ2011年11月2日「SSRIは本当に自殺率をあげるのか?」を参考に頂ければ幸いです。
投稿: タップ | 2012年1月28日 (土) 16時43分
精神薬利権とずぶずぶの精神科医ご苦労さまです。精神薬によって人生を崩壊させられる人もたくさんいるのです。気軽に処方するのはやめて下さい。
投稿: | 2012年1月28日 (土) 11時57分
どなたか分かりませんが、コメントありがとうございます。一応、文献を元にブログの内容を書いております。このSSRIと自殺の関連に関してはまだ結論は得ていないため、「もっと勉強しろ」という点に関しては同意いたします。しかし、私がいままでSSRIを処方した方で、自殺されたかた(既遂、未遂)ともにございませんし、反論する文献も多々ございます。もう少し冷静な対応が必要という意味で、このブログを書かせて頂きました。しかし、controversialな話題なので、当時のブログの内容を一部修正し、後日このテーマについては改めて書くつもりです。ご指摘の通り、「若者」については自殺とSSRIとの因果関係は否定しにくいのですが、それ以外の年齢層ではむしろ自殺率は下げることを示します。
投稿: タップ | 2011年9月26日 (月) 17時13分
SSRIは自殺率を高める。あんたは勉強不足で無知だ。精神科医ならもっと勉強しろ。知らないくせに知ってるような事を書くな。お前のような医者が日本の若者を殺すのだ。
投稿: | 2011年9月26日 (月) 16時19分